イスラム金融に注目される背景には何があるのでしょうか?
イスラム金融の拡大
バーレーンやマレーシアは、イスラム金融の先進国といわれています。バーレーン中央銀行(Central Bank of Bahrain)、マレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia)はイスラム金融部門の統計を公表していますが、イスラム金融資産残高の推移が年間成長率15%程度となっています。
シティグループのイスラム金融部門「Citi Islamic」は、最近の年間成長率を17%と報告しています。
このように、イスラム金融は非常に高い伸び率を記録し、安定的な成長曲線を描いています。
何が成長を促しているのか?
確かにグローバル化・グローバル経済は、世界中のあらゆるものがグローバルに共有または、緊密な関係を築くことを必要としています。イスラム世界で行われてきたイスラム金融というシステムが他の地域でも応用できるのであれば、グローバルに展開することも当然と言えば当然です。
欧米発祥の一般の金融制度が失った面をイスラム金融が持っているというメリット部分は確かにあります。イスラム金融は行き過ぎたリスク金融とバランスをとるための重要なシステムなのです。
オイルマネーの影響
近年は原油高の傾向にあります。原油価格上昇によって、イスラム圏産油国の投資家が運用できる資金量は大幅に増加しました。
このような石油からの収入を原資とした資産運用のみならず、原油高景気に沸いた湾岸諸国での開発プロジェクト(オフィス・商業施設等の不動産開発、石油関連プラントや工場の建設等)が次々にスタートしたことで、資金調達上、イスラム金融方式のものが増えたということも指摘できます。
9.11テロの影響
欧米諸国を中心に世界から、イスラム世界に向けられた「危険視」がイスラム金融を拡大させているということもいえます。
9.11テロ以降、イスラム諸国の投資家は米国での資産凍結を恐れて、米国から投資資金を引き揚げたのです。
引き上げられた資金イスラム諸国に還流することになりますが、それを運用する必要があります。その受け皿がイスラム金融だったということなのです。
このような「イスラム・マネー回帰」の動きがイスラム金融の拡大に大きく影響したのは確かですが、9.11テロ以前からイスラム金融の拡大の潮流があったため、9.11テロは、イスラム・マネー回帰を加速させたというほうが正しいでしょう。
イスラム世界自体の拡大
イスラム諸国は、少子化の現象が起きていません。人口増加率は先進諸国と比較して高めで、イスラム諸国は経済規模を大きくしています。
また、グローバル社会の中にあっても、イスラム社会は西洋文明との対立傾向を強めています。それにともない、イスラム教徒のアイデンティティ、宗教心は、高まりつつあると言っていいでしょう。
このようなイスラム文化への回帰の思潮がイスラム金融拡大の背景の一つとなっています。
金融システムとしての優位性
確かに、イスラム世界が拡大することで、それにつられてイスラム金融が拡大するということもありますが、実は、イスラム金融は非イスラム教徒の利用も多いのです。
それを考えると、イスラム金融という金融システム自体に優位性があるという「経済合理性」があるといったほうがいいでしょう。
一般的な金融と比較して、より低コストで資金が調達できるケースもあります。特に、投資運用の分野では、社会的責任投資(SRI)の一環としてイスラム金融を活用することも可能なのです。
イスラム金融であれば、シャリアに適合しているかどうか(倫理的な判断)が行われるため、反道徳的な事業を回避することが可能になるため、結果的に社会的責任投資になるということです。
イスラム金融が拡大する背景には、政治や経済、社会の構造変化、テロなどの情勢からの影響ばかりではなく、イスラム金融自体が持っている利点にイスラム世界のみならず、世界が着目し始めたということができるでしょう。